ここにも科学

 星空マニア
鈴木 麻乃

星のカタログ

 「星のカタログ」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろうか。星の値段がずらっと書かれているものを想像した人は残念。私もそんなカタログがあったら手にとってみたいが、ここに書くカタログは、星(あるいは天体)の位置や明るさなど様々なデータを集めたリストを言う。

 夜空の星に話を移そう。例えば、春の夜空に見られるかに座。星が暗くてほとんど見えない星座で、特徴は甲羅の真ん中にあるプレセペ星団くらい。ただし、この星団は暗い場所だと肉眼でも見える。さて、このプレセペ星団にはM44という別名がある。そうそうこれこれ、これがカタログの番号なのだ。Mはメシエカタログの天体を表す。18世紀のフランスの天文学者シャルル・メシエは彗星探索に力を尽くした人で、生涯に21個の彗星を見つけ、彗星の番人と呼ばれた。彼は効率良く新彗星を探すために、彗星に良く似た紛らわしい天体をリストアップした。それがメシエカタログである。当時の望遠鏡で観察できる程度の明るい天体ばかりがリストアップされているので、星空観察では最も身近なカタログである。ただし、メシエは彗星と見間違えそうなぼんやり天体を片っ端からリストアップしていったので、星雲、星団、銀河、何でもありの上、順番もバラバラ。M1は冬の星座であるおうし座にあるが、M2は秋の星座のみずがめ座まで飛ぶ。順番にしておいてくれたら覚えやすいのになあ、といつも思う。

 星好きの間では、107個のメシエ天体を一晩で全て見るという競技がある。その名もメシエマラソン。できるだけたくさん見るためには、夜が程よく長く、メシエ天体の集まった場所が夜に見られる3月末が最も適した季節らしい。完全な徹夜で、しかも次から次へと天体を導入しなければならず、かなり過酷なレースになるらしい。それを聞くだけでひるむ私はまだ一度も挑戦したことがないのだが、星空のマラソン、あなたはいかがでしょうか。           

星のカタログ

すずき・まの /元学芸員


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