研究ノート

 ●ビニールチューブによる爆鳴気の演示実験について
学芸課 科学技術研究科 学芸員 篠原 功治

 水素と酸素の混合気体は、それぞれ2体積と1体積の割合で最も大きな爆発が起こり、水蒸気が発生するといわれています。この混合気体を爆鳴気といいます。今回、爆鳴気の演示実験を行う際の安全で効果的な条件を検討するため、水素と酸素の割合を変えた混合気体を爆発させ、光の強さ・光の色・爆音の強さ・ビニールチューブの温度の4要素を測定しました。
 爆発実験は、水素の割合を6.7%・13.3%・20%・26.7%・33.3% ・40%・46.7%・53.3% ・60%・66.7%・73.3%・80%・86.7%・93.3%・100%とした混合気体15種を用い、軟質の透明な塩化ビニール樹脂を材質とした内径1.2cm・外径1.5cm・長さ1mのチューブと着火装置を使用しました〈図1〉
 着火装置は、ライターで使用されている圧電素子・ガラス管・細いビニールチューブ・ゴム栓で組み立てました。測定は原則3回ずつ行い、光の強さのみ強弱の幅が大きかったため6回行いました。光の強さはフラッシュメーター、光の色はデジタルビデオカメラ、爆音の強さは騒音計、ビニールチューブの温度はデジタル温度計を使用しました。
 爆発は、水素の割合6.7%・13.3%・93.3%・100%を除いた20%から86.7%の11種の混合気体で確認できました〈図2〉
実験装置
▲〈図1〉 実験装置
水素の割合33.3%の混合気体の爆発
▲〈図2〉 水素の割合33.3%の混合気体の爆発
内部は白色、外周部は黄色


 〈図3〉に水素の割合と光の強さ・爆音の強さ・ビニールチューブの温度との関係をまとめました。その結果、水素の割合66.7%の混合気体が光の強さ、爆音の大きさ、ビニールチューブの温度の高さから最も効果的な条件であることが分かりました。

図3

▲図3 水素の割合と光の強さ、爆音の強さ、ビニールチューブの温度

赤色のマーカーはビニールチューブ後半部で黄色く強い光が発生したことを示す。
青色のマーカーはビニールチューブ後半部でシアンを伴った強い光が発生したことを示す。
濃色で示した棒グラフは、爆発後にビニールチューブ後半部が変色した水素と酸素の割合。


 また、爆発によるビニールチューブの変色は、水素の割合66.7%前後の混合気体で起こりました。光の色は、光の強さ・爆音の強さ・温度と合わせて〈表1〉にまとめました。爆発時、ビニールチューブ内部で白色、外周部でマゼンダ・シアン・黄色が発生し、水素の割合66.7%と73.3%の混合気体で測定したシアンが水のイメージと重なり最も美しく思われました。
 なお、演示の際には、ビニールチューブ前半部の0/4から1/4は爆発が起こらない場合があること、後半部の3/4から4/4は爆発によるビニールチューブ内面の燃焼が起こるため火傷に留意する必要があることも分かりました。ビニールチューブ中央部の1/4から3/4を手で握ることが最も安全な条件といえます。

体験者に与える知覚
▲〈表1〉 体験者に与える知覚
水素の割合は上から33.3%・40%・46.7%、60%・53.3%・60%・80%、66.7%・73.3%

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