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 ●植物のおぼえ方
自然研究科 学芸員 川又 明徳

 「野外に咲いている花の名前を言えるようになりたい。」こんなことを考えたことのある方は多いことでしょう。そして、図鑑を買って挑戦し、こころざし半ばで諦めてしまったという方も少なくないはずです。そんな希望を叶えるためにはどうすればいいのでしょう。

観察日記をつける
 観察日記をつける野外で出会った植物を、図鑑で調べていては日が暮れてしまいます。後で調べるために、観察日記をつけましょう。日記と言うほど大げさなものではなく、植物観察専用のメモ帳を持ち歩き、日付と場所、気になる植物の特徴を書くのです。例えば、花びらの枚数、形、色、葉の付き方やその形など、その植物全体をくまなく観察して、とにかく気づいたことを何でも書き留めます。また、メモと一緒にスケッチもするよう心掛けましょう。下手でも自分に解るように書けばいいのです。じっくりと観察した植物は家に帰ってメモを見れば、おのずとその姿を思い出すことができるでしょう。そうすれば図鑑で調べることが楽になります。
 植物を採集して標本を作ったり、写真をとる方法もありますが、まずは観察日記をつけることが基本になります。

最初は「絵合わせ」しかない
 絵合わせ次に図鑑を使って、目的の植物を調べていくわけですが、最初は「絵合わせ」しかありません。「絵合わせ」とは図鑑を一枚一枚めくりながら目的の植物を探していく方法です。慣れないうちは、全てのページを見て確認するしかありません。面倒な作業のように思われますが、図鑑を見る事を繰り返していくうちに、図鑑のどの辺りにどんな植物が載っているのか把握することができます。また、目的以外の植物の特徴も、自然とおぼえることができるのです。

挫折しないために
 挫折しないためのポイントは二つあります。
 挫折しないために一つは、家の庭や近所など、身近な場所に生えている植物からおぼえていくことです。山に咲く可憐な野草に憧れる方も多いと思いますが、毎日見ることのできる植物ほど、その特徴を観察しやすいはずです。名前を言えるようになると、ちょっといい気分になれます。その気持ちを忘れなければ、長続きするでしょう。
 挫折しないためにもう一つは自分に合った図鑑を選ぶことです。選ぶ基準は、植物の掲載数にこだわらず、絵合わせしやすい写真が掲載されている図鑑を選ぶことです。掲載数が多いと絵合わせするのに疲れます。また、掲載写真が花のアップだけだと、植物全体の雰囲気をつかむことができず、絵合わせもできません。最近では、季節ごとに分けられた図鑑や花の色で引くことのできる図鑑など、いろいろなタイプが出版されています。選ぶ時は実際に手に取って、よく吟味しましょう。しかし、料理の本を買っても、その日から料理が上手くはならないように、よい図鑑を買っても使い込まなければ身に付いたとは言えないのです。
 野外でメモをとる観察日記も、図鑑を一枚一枚確認していく絵合わせも、けっこう面倒なものです。しかし、あなたが本当に植物の名前をおぼえたいのなら、きっと続けることができるでしょう。焦らず、欲張らず、急がば回れの気持ちで続けることが大切です。

タンポポ レンゲ



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