研究ノート

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 ●愛媛の哺乳類 
振興課企画普及係 学芸員 山本貴仁

 哺乳類は、そのほとんどが夜行性のため、普段その姿を見ることはありません。また、多くの種類がいる小型の哺乳類は、捕獲してみないとどの種類か判断することができないなど、県内にどんな種類が生息しているのかさえ、なかなか知られていないのが実情です。
 そこで、これまでに発表された採集報告や地域的な調査報告、博物館の標本、目撃情報などを集めるとともに、実際に野外で捕獲調査を行い、愛媛県にどんな種類の哺乳類が生息しているか調べてみました。その結果、海に棲むクジラの仲間も含めて55種類の哺乳類が確認されました。



 国の特別天然記念物にも指定されているニホンカワウソは、絶滅が心配される幻の哺乳類となってしまいましたが、幻の哺乳類はほかにもいたのです。
 カワネズミは、ネズミという名前が付けられていますが、渓流にすむモグラの仲間です。ほとんどの図鑑では、四国にカワネズミが生息していることになっていますが、現在まで確実に採集されたという記録はありません。 モグラの仲間のヒメヒミズ、アズマモグラも1970年代に、石鎚山など東予地方の標高の高いところで確認されていますが、それ以後は確認されていません。
 コウモリの仲間のクロホオヒゲコウモリは、面河村と柳谷村で2例しか確認されていません。チチブコウモリ、ヤマコウモリ、ヒナコウモリは面河村の1例。モリアブラコウモリは面河村と石鎚山の2例だけです。しかも、これらの記録もほとんどが、1970年代の記録です。また、いずれの種類も、県内に標本は保管されていません。コウモリの仲間は、特に捕獲が難しいために確認されないということもありますが、同じく確認の少なかったテングコウモリ、コテングコウモリ、ノレンコウモリ、ウサギコウモリがここ数年、相次いで確認されたことから、先に述べた5種類はやはり個体数が極端に少ないと思われます。
 これまで、中型、大型の哺乳類については、様々な調査が行われてきましたが、小型の哺乳類については、まとまった調査が行われてきませんでした。特に島嶼部や南予地域では、ほとんど調査が行われていません。生息数の特に少ないと思われる種類については、その生息状況を把握し適切な保護を行うことも必要になってきます。生息状況が明らかにされないまま、環境の改変が進めば、幻のまま姿を消してしまうことになってしまいます。カワネズミは、本当に四国に生息しているのでしょうか?十分な調査が進めば、これまで未確認であった種類が新たに確認されるかもしれません。県内の哺乳類の調査は、まだ始まったばかりなのです。


テングコウモリ
テングコウモリ

キクガシラコウモリ
キクガシラコウモリ
種 名
モグラ目 トガリネズミ科 トガリネズミ
カワネズミ
ジネズミ
モグラ科 ヒメヒミズ
ヒミズ
アズマモグラ
コウベモグラ
コウモリ目 キクガシラコウモリ科 キクガシラコウモリ
コキクガシラコウモリ
ヒナコウモリ科 モモジロコウモリ
クロホオヒゲコウモリ
ノレンコウモリ
アブラコウモリ
モリアブラコウモリ
ヤマコウモリ
ヒナコウモリ
チチブコウモリ
ウサギコウモリ
ユビナガコウモリ
テングコウモリ
コテングコウモリ
オヒキコウモリ科 オヒキコウモリ
サル目 オナガザル科 ニホンザル
ウサギ目 ウサギ科 ノウサギ
ネズミ目 リス科 ニホンリス
ホンドモモンガ
ムササビ
ヤマネ科 ヤマネ
ネズミ科 スミスネズミ
カヤネズミ
ヒメネズミ
アカネズミ
ドブネズミ
クマネズミ
ハツカネズミ
ネコ目 クマ科 ツキノワグマ
イヌ科 キツネ
タヌキ
イタチ科 テン
イタチ
チョウセンイタチ
アナグマ
カワウソ
ジャコウネコ科 ハクビシン
ウシ目 イノシシ科 イノシシ
シカ科 ニホンジカ
ウシ科 カモシカ
クジラ目 ナガスクジラ科 ミンククジラ
ニタリクジラ
コククジラ科 コククジラ
マイルカ科 シャチ
オキゴンドウ
ハナゴンドウ
マイルカ
ネズミイルカ科 スナメリ

愛媛のコウモリ
 愛媛県ではこれまで15種類のコウモリが確認されています。
 街中にすんでいて、夕方に飛んでいる姿が見られるのは、アブラコウモリです。その他のコウモリは、なかなか目にすることはありませんが、洞窟に多いのはキクガシラコウモリ、コキクガシラコウモリ、ユビナガコウモリです。まれにノレンコウモリ、テングコウモリも洞窟や素堀りのトンネルで見つかります。また、モリアブラコウモリやヤマコウモリなど樹洞をすみかにしているコウモリもいます。



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