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カラフル人工イクラの実験

科学技術研究科 学芸員 進 悦子
親子写真   子ども写真
「人工イクラ」の実験を、博物館友の会の科学クラブの吉岡さんと行いました。博物館では、いろいろな科学実験を楽しめる各種イベントを行っておりますが、「次のゴールデンウィークのイベントに、「人工イクラ」の実験を行うのはどうでしょう?」と、吉岡さんが提案してくれました。私も以前から興味があったので、一緒に実験をしてみよう!ということになりました。

「人工イクラ」は、その名のとおり、本物そっくりに作られた人造のイクラのことで、サラダ油や海藻エキスで作られています。高価なイクラを気軽に味わえるために開発され、見た目や味、口当たりも見分けがつきにくい程そっくりです。現在は、輸入イクラの価格が下がり「人工イクラ」はあまり使われなくなったそうです。イベントでは食べる目的で作るのではないので、見て楽しめるように、いろいろな色のイクラを作ってみてはどうかと思い、試してみることにしました。

まずアルギン酸ナトリウム水溶液を1%の濃度、乳酸カルシウム水溶液も1%濃度で作ります。
人工イクラ
乳酸カルシウム(左)とアルギン酸ナトリウム(右)は、
インターネットでも手に入ります
アルギン酸ナトリウムは、海藻類のぬるぬるの成分で、ジャムやソースなどの増粘剤として使われる食品添加物です。このアルギン酸ナトリウムに赤色食紅で着色し、これをスポイドで吸って、乳酸カルシウム水溶液の中に一滴ずつ落とします。すると、アルギン酸ナトリウムと乳酸カルシウムが反応し、アルギン酸ナトリウム水溶液の表面にアルギン酸カルシウムの膜を作り粒状になります。これが「人工イクラ」です。粒状になって水溶液の中に落ちていく様子がとても面白く、そしてきれいです。

食紅も緑、青、黄色も試してみると、とてもきれいでカラフルなイクラが出来ました。夢中になって作っていくと時間が経つのも忘れてしまいました。ところが、作ってから時間の経ったイクラを見ると、イクラを保存する水溶液にうっすらと色がついていることに気がつきました。よく観察すると、食紅で着色したイクラのすべてが脱色し薄くなっていました。イクラの膜から色素が染み出てしまい、周りの液に色をつけてしまっているようでした。すると、絵の具によってアルギン酸ナトリウムとうまく混ざらないもの、色素が染み出てしまうものがあることがわかりました。イベントで行うためには、どれをどのくらいの量、どういう方法で行うと必ずうまくできるかを特定しなければなりません。
人工イクラ
(人工イクラの色素がしみ出して、薄い紫色に染まった保存液)

別の日に、濃度を変えたり様々な着色料を混ぜたりして調べてみることにしました。 1%アルギン酸ナトリウム水溶液と4%アルギン酸ナトリウム水溶液を用意し、着色料にサクラマット水彩絵の具(赤、青、紫、黄、緑)、100円ショップの絵の具(赤、青、紫、黄、緑)、ポスターカラー、マーブリング絵の具を用意し、アルギン酸ナトリウム水溶液20mlに対して各種絵の具を0.05gずつ入れて、1%乳酸カルシウム水溶液に落として実験してみました。その結果を以下にまとめてみました。
サクラマット絵の具の「青」はアルギン酸ナトリウム水溶液に混ざりにくい。
100円ショップの「紫」と「青」の絵の具は非常に混ざりにくい。
100円ショップ絵の具の「紫」だけ色が染みだしていた。
ポスターカラーは原色でポップ感、マーブリングは透明感があってきれい。
水道水で保存すると、イクラが水分を含み膨張してしまう。
乳酸カルシウム水溶液に保存すると、現状の大きさを保つもしくは収縮する。
4%アルギン酸ナトリウム水溶液のイクラは水道水に入れておくと、1%にくらべて非常に大きく膨張する。

人工イクラサンプル   人工イクラサンプル  
左は紫色、右は赤色の100円ショップの絵の具で着色したイクラ
 
左は水道水、右は乳酸化カルシウム水溶液で保存したイクラ
 
左はポスターカラー青色で、右はマーブリング青色で着色したイクラ
 
アルギン酸ナトリウムは、酸性のものや、カルシウムを含むものには溶けない性質があるそうで、青や紫の顔料に含まれる成分と関係するのかもしれません。
以上の結果から
100円ショップの絵の具「青」「紫」は避けること
乳酸カルシウム水溶液に保存するほうが最初の形をキープできる
アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度を上げなくても、1%濃度で十分イベントに対応できるイクラを作ることができる
という結論を得ることができました。
左はアルギン酸ナトリウム水溶液1%濃度、右は4%濃度のイクラ

更に一週間後、この結果をもとに、プレ実験として科学クラブのみなさんに作ってもらいました。子ども達も大人も夢中になって作り、こんなにカラフルなイクラを作ることができました。
親子写真   子ども写真
科学クラブのみんなで人工イクラを作ってみました
ペットボトル   ペットボトル   ペットボトル
ペットボトルに詰めました。水中を浮遊する人工イクラがきれい!
次に考えることは、イベントでの運用方法と保存する容器について。ゴールデンウィークのイベントで行えるようにするためには、もう少し知恵を出さなければなりません。けれども、科学クラブの方の中からアイデアが生まれて、一緒に実験しながら考えていく作業はとても楽しい時間でした。イベントで、皆さんに楽しい科学実験をしてもらえるようがんばります。ぜひ博物館に来てくださいね!


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