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アサギマダラの移動に関する愛媛県の記録●

自然研究科 学芸員 大西 剛
アサギマダラは、1980年に始まったはねに印(マーク)を書いて飛ばすマーキング調査によって、日本列島を春は南から北へ、秋は北から南へ移動をしていることが分かってきました。(マーキング調査の詳しい内容については、前回私が書いた「ちょっといい話」を見てください。)現在では、さらに詳しい渡りの経路を明らかにするために、毎年全国各地でマーキング調査が行われています。

 ところで愛媛県では、1997年に滋賀県から飛んできた移動個体が再捕獲されて以来、2002年までに7件の移動記録が確認されていました。しかし記録の数が少なく、疑問な点が多くありました。ところが2003年には皆さんの活躍のおかげで、これまでを上回る8件の移動記録が確認されました。その結果は、今まで疑問であった点をいくつも解決してくれるものでした。今回はその成果について紹介したいと思います。



疑問その1 夏はどこで過ごしているの?
答 え ずっと高い山にいるようです。

8月20日に皿ヶ嶺を出発した蝶が、2日後に瓶ヶ森林道で再捕獲されました。夏の間は高い山の間を移動しながら過ごしているようです。


疑問その2 佐田岬半島にはどこから集まってくるの?
答 え 皿ヶ嶺からの移動が確認されました。

8月に皿ヶ嶺を出発した蝶が、10月に佐田岬半島で再捕獲されました。佐田岬半島は秋になると多くのアサギマダラが集まって来ますが、夏に山にいた蝶も含まれているようです。


疑問その3 佐田岬半島からどこに移動するの?
答 え トカラ中之島への移動が確認されました。

これまで佐田岬半島からはマークを付けられた多くのアサギマダラが出発しましたが、1頭も再捕獲されたことがありませんでした。この蝶は小学生の中塚植哉君と藤原直希君がマークを付けてくれたもので、この記録によって佐田岬半島から出発したアサギマダラが遠くの島に渡っていることが判明しました。


疑問その4 喜界島以外には移動しないの?
答 え 沖永良部島・南大東島・浜比嘉島への移動が確認されました。




 これまで愛媛県から鹿児島県の喜界島に渡った蝶が2頭確認されていましたが、その他の場所では見つかったことがありませんでした。今年は3つの島で新たに再捕獲され、中でも沖縄県の浜比嘉島まで飛んだ蝶の距離は、これまでで最も長い記録になりました。



 このほかにも重信町皿ヶ嶺を出発したESS-168(写真1)と、西海町権現山を出発したT-10(写真2)が、写真を提供してくれた喜界島の福島誠氏に再捕獲されました。喜界島はアサギマダラの集まる島として有名で、2003年には全国各地から飛んできた80頭を超えるアサギマダラが再捕獲されています。


写真1

写真2
▲クリックで拡大

 このように、マーキング調査の結果はいろいろな事実を明らかにしてくれました。この成果は、たくさんのアサギマダラをつかまえてマークをつけてくださった皆様のおかげです。アサギマダラの旅にはまだまだ分からないことがたくさんあります。自分がマークをつけたアサギマダラが何百キロも旅をして、いつか遠い島で誰かに見つけてもらえる日を夢見ながら、あなたも今年は調査に参加してみませんか?



自然観察会「渡るチョウ の観察」の様子

2003年10月5日に博物館講座自然観察会「渡るチョウの観察」が開催されました。

写真 写真 写真
まずは、アサギマダラを捕まえます。 羽にマークを記入します。 マークした内容を記録用紙に記入しておきます。
 


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